あんたみたいな低学歴が旦那の部下とか、ほんと最悪。
「学が無い分、せめて身の程をわきまえて、上司になるうちの旦那の役に立つように励んでよね」
社宅へ引っ越してきた日、俺たち夫婦は総務部長のお宅で、夫人にこんな言葉を投げられた。
夫婦そろって、口を開けば中卒の俺をバカにする発言ばかり。
嫌気がさして、さっさと帰ろうと決意した時、ずっと俺の隣で静かに微笑んでいた妻が、口を開いた
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【スカッとする話】中卒が本社異動
俺は40歳の会社員、ホシノ。
家庭の事情で中学卒業から社会に出て働いている。
今の会社には20歳になってから入社した。
学歴不問と書かれていた会社だけあり、競争率は高かったものの、
俺は採用試験に合格した。
今まで様々な職種のアルバイトを経験し、
合間に勉強を怠らなかったおかげだと思う。
採用してくれた社長には感謝してもしきれない。
この会社に入ったから今の俺があるし、妻とも出会えた。
だからこそ、俺にとって今の会社は特別な思いがあるのだ。
結婚してからというもの、俺はある事情があって、
いろいろな支社に異動してきた。
引っ越しが多い分、妻には苦労をかけてきたが、ついにそれも終わりにできそうで安心している。
というのも本社異動が決まり、もう異動しなくてもいいだろうと言われたのだ。
ちょうど社宅に空きがあるというので、俺たちはそこへ引っ越すと決めた。
マンションなどを借りても良かったのだが、
俺も妻も、節約できるならその方がいいと考えたのだ。
それでも本当にいいのか、と妻に尋ねると、
「どうせどこか借りるなら、ゆっくり吟味して決めたいわ。
それまでは社宅で少し節約しましょうよ」と妻は笑っていた。
同じ社内の人が住むとあって、近隣住民との交流は求められるかもしれないが、
俺たちは人付き合いが嫌いじゃないので、そこも問題はない。
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【スカッとする話】社宅に引っ越し
引っ越し当日に、隣のご家族と偶然鉢合わせになり、ご挨拶させてもらったのだが、
総務部長のお宅は社宅のボス的存在だから気をつけろと忠告された。
学歴主義で、プライドが高いらしい。
「俺、中卒だし何か言われるかな」
妻と二人きりで社宅の通路を歩きながらつぶやくと、妻が俺の背中を軽く叩いた。
「なあに?弱気になっちゃって。
あなたは仕事ができるし、評価されているのよ。
もっと自信を持って!
どうしても気になるなら、聞かれない限り言わなければいいだけでしょ」
妻の笑顔に、それもそうだなと俺もつられて笑う。
そもそも一生住むわけでもないし、なるようになるさ。
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【スカッとする話】部長夫人に挨拶
引っ越しの挨拶回りで、いよいよ総務部長のお宅の順番が回ってきた。
俺は少し緊張しながら、インターホンを押す。
ホシノと申します。
本日、下の階に引っ越してきたので、ご挨拶に伺いました」
まあ、ご丁寧に。少々お待ちくださいね」
インターホンから女性の声が流れ、少しして玄関の扉が開いた。
部長夫人が笑顔で俺たちを出迎える。
いかにもセレブな奥様という見た目だ。
「あなた方が引っ越してくるのは噂で知ってました。
そちらの旦那さん、ホシノさんだったかしら?
あなた、中卒なんですってね!
私の周りには中卒なんて一人もいないから、一体どんな人かと楽しみにしていたんですよ!」
いきなりの先制パンチ、といった風の夫人の発言に俺は面食らった。
引っ越し前に、内見に来た時があったのだが、その時にあった人と立ち話で、
少し学歴に触れた記憶がある。
もしかしてそれが噂となり、夫人の耳に入ったのだろうか。
「ええ、まあ」と俺がぎこちなく答えると、
夫人は目の前で意地悪く笑っている。
なるほど、気をつけろと忠告されるわけだ。
俺が呆気に取られている隣で、
妻が「つまらないものですが」と紙袋を夫人に手渡す。
中身は引っ越しの挨拶として持ってきた品だ。
夫人は何を思ったのか、ビリビリとその場で包装を破っていく。
「あら、タオル?
さすが学の無い人は選ぶセンスもゼロね。
もっとお洒落なお菓子とかあるでしょ?
まあ、一応合格にしてあげるわ」
謎の上から目線に俺はめまいを覚えた。
食べ物は好みやアレルギーを考慮して避けただけなのに。
というか、そっちは常識が足りてないのでは!?
うろたえる俺とは違い、
妻は表情を変えずに、静かに微笑んでいる。
「そ、それじゃあ私たちはこれで失礼します」
タオルは定番だと思うし、うちがもらったら嬉しいけどなあ。
そんなことを考えながら、俺は夫人に頭を下げた。
隣人の忠告といい、実際の言動といい、関われば関わるだけ面倒そうな匂いがプンプンする。
単純に、夫人の香水がキツイだけかもしれないが。
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【スカッとする話】総務部長登場
「まあ、とんぼ返りなんてひどいわ。
ちょっと上がってお茶でもいかが?
今日はうちの旦那もおりますし」
「申し訳ありません。引っ越しの荷ほどきも残っておりますので」
俺の言い訳に、夫人の後ろの方から「おい」声がかかった。
「うちの嫁がせっかく誘ったのになんだ。
つべこべ言わずにさっさと上がらんか」
夫人の後ろから現れたのは、50代後半くらいの男性だ。
恐らくこの人が総務部長だろう。
結局、俺たちは総務部長のお宅に上がらせてもらうことに。
部屋に通されて、俺たちは改めて挨拶する。
それにしても本社に中卒なんて・・・
人事も人事だが、社長も何をお考えなのやら。
よほど人手が足りていないらしいな。
お前入社何年だ?
人事部とうちの部署に最近空きができたが、人事は少し前に若いのが入ったし、
オレの部下として配属になるだろうな。
やれやれ、無能な部下をもつと、苦労するのはいつだって上司のオレだ」
「あなた、かわいそうに」
夫人が部長の手を握り、部長と夫人が見つめ合う。
何を見せつけられているんだ、俺たちは。
そういえば、50を過ぎていそうな部長に対して
夫人はかなり若い。
30代後半の嫁と、そう歳が変わらないように見える。
、
そんなことよりも、俺は隣にいる妻が心配だった。
部長が登場した時は、上がらせてもらうしかないと思ったが、やはり内心は穏やかではないだろう。
俺たちが何も言わないのをいいことに、部長夫婦は学歴や収入でマウントを取り、
俺のような中卒はいかに無能で、品性が無いかと語っていく。
あんたみたいな低学歴が旦那の部下とか、ホント最悪。
学が無い分、せめて身の程をわきまえて、上司になるうちの旦那の役に立つように励んでよね」
あげくの果てに、夫人は俺に向かってこう言い放った。
喋っているうちに調子に乗って、素が出たのだろう。
「なっ」
さすがの俺も、もう黙ってはいられない。
引っ越し初日で初対面というのもあり、あえて何を言われてもずっと黙っていた。
俺がバカにされる分にはかまわない。
ヘタに俺が反論して、これから社宅での交流が深くなる妻の立場が悪くなるのだけは、
避けなくてはならないと思ったからだ。
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【スカッとする話】中卒が総務部長夫婦に反論
「お言葉ですが、学歴だけで人を判断する人間こそ、
品性が無いと私は考えます。
ご挨拶は済みましたので、これでおいとまさせていただきますね。
さ、行こうか」
俺の反論が意外だったらしく、部長夫婦は顔を赤くし、口をパクパクさせていた。
俺はその隙を突き、帰ろうと妻に促すが、妻は静かな微笑みを浮かべたまま口を開いた。
「あなた、この人をクビにしましょ」
妻の唐突な発言に、
「え?」
と夫人は間の抜けた声をあげる。
その時、俺はハッとした。
怒る姿をめったに見ないので失念していたが、
妻は怒っている時ほどニコニコしているタチなのだ。
部長夫婦に対して、妻は言葉を続けていく。
先ほどから何を勘違いしてらっしゃるのかは知りませんが、
うちの夫は総務部長の部下にはなりませんわ。
むしろ将来的にあなたより上の立場になると思いますよ」
「はぁ?どういう意味だ?」
自分よりも上の立場という言葉に反応し、部長が不愉快そうに聞き返した。
「私は次は人事部長に決まっておりますので」
俺がフォローするように口を挟むと、夫人が鼻を鳴らす。
「中卒が人事部長?それも意味がわからないけど、それが何だって言うのよ。
うちの旦那より上になるなんてあり得ないじゃないの」
一方で妻は首を振る。
「私の父は、あなたのご主人が働いている会社の社長です。
彼は私の夫で、社長の身内でもあります。
お分かりですか?
今は人事部長になると決まっておりますが、
ゆくゆくは副社長へ昇進していくでしょう。
もちろん、手放しでそうなるとは言いませんが」
妻は嘘をついていない。
実を言うと、妻はうちの会社の社長令嬢だ。
馴れ初めは長くなるので省くが、
俺たちは社内行事で出会い、結婚した。
将来的に社長になる、妻の兄の右腕になるために俺は修行の一環で、
各地の支社を異動しながら、支社ごとの実情を見て、視野を広げてきたのだ。
社宅に引っ越しとなる際も、仮にも社長令嬢が社宅にと俺は思ったが、
社長は自分にも身内にも厳しい人物。
特別扱いはしないはずだと、妻は話していた。
それに自分が社長令嬢だと知らない人が多い方が、気を使わなくていいと思ったようだ。
だが、こんなことなら前もって社長令嬢だと明かしておいた方が、この夫婦に絡まれずに済んだかもしれない。
「あ、あなたが社長の娘で、こっちの中卒がその夫ですって?
冗談も休み休みいなさいよ。
ありえなさすぎて、ちっとも笑えないわ!」
「その通りだ。社長は立派な学歴をお持ちの方だ。
それに、社長令嬢の夫は優秀な人物だと噂で聞いている。
中卒のお前が、社長令嬢の夫で副社長だと?
つくならもっとマシな嘘にしておけ!」
嘘と決めつける部長に向かって俺は小さく息をつく。
まあ、確かに俺たちは身内だけで海外挙式したし、俺はあくまで令嬢の夫というだけだから、
大きな社内イベントに顔を出す機会もなかった。
「ではそう思っていればよろしいかと。
今すぐにクビ・・・はともかく、あなたには問題が多そうですし、よくよく注意しておくことにしましょう」
部長夫婦はまだギャーギャーと何か言っていたが、俺たちはお構いなしに、
素早く部長夫婦の家から出た。
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【スカッとする話】中卒が人事部長に昇進
自分たちの部屋に戻ると、
妻が申し訳なさそうに声をかけてくる。
「ごめんなさい。私、つい頭に来てしまって」
俺は首を振った。
「いや、君にそこまで言わせてしまった俺が悪いよ。
こっちこそ嫌な思いをさせてごめんな」
俺たちはお互いに謝り合いやがて微笑んだ。
それから2週間が経過。
俺はとっくに本社の新しい人事部長として配属され、仕事に励んでいた。
部下が書類を俺に手渡しながら言う。
「それにしても、
ホシノさんも大変でしたね。中卒とか、高卒とか・・・
常識があって仕事ができれば、僕としては何も問題ないと思うんですが」
彼は前の支社で一緒に働いていた、俺が信頼を置く部下だ。
俺よりも数週間ほど、一足早くこちらに異動していた。
俺は一瞬、何の話だろうと思ったが、手渡された書類からすぐに察しがつく。
おそらく総務部長だろう。
部下の彼に、社宅での出来事を話してあったのだ。
「ああ、そうなんだ。
妻もかなり怒っていたし俺も参ったよ」
少し声を小さくして俺は苦笑した。
「それより悪かったね。
急にこんな仕事を頼んで。
君も異動してきて間もないのに、大変だったろう?」
部下は笑いながら首を振る。
たった今手渡された書類、これが部下に頼んだ仕事なのだが、
想像以上に分厚く、情報量が多い。
「いえいえ、すぐに情報が集まりましたし、
ホシノさんが人事部にいらしてからは、ほとんどご自分で調べてたじゃないですか。
僕はお手伝い程度に書類にまとめただけですよ」
その時、オフィスの入り口の方から俺たちの方へ近づいてくる人物に気がつき、俺は視線を向けた。
噂をすればなんとやら、だ。
総務部長が、無愛想な表情でデスクに座った俺を見下ろす。
俺が立ち上がり、用件を尋ねると、総務部長は憎らしげに俺をにらみつけた。
「いやなに、オレも多忙でな。すっかり忘れていたんだが、一向にお前が俺のもとに配属されないから、
もしやと思って見に来たんだよ。
まさか本当に人事部長になっているなんて。
前任者が辞めるのは聞いていたが、まさか能無しの中卒風情が入れ替わりに部長になるなんて誰が思うかよ。
この会社もいよいよ危ういかもな!」
あまりの暴言に、
「なんてことを言うんです!」
と部下が言う。
俺は「ありがとう、でも大丈夫だ」
と一声かけて、部下を制止した。
俺は不快感で胸がいっぱいなのをこらえ、
妻をならって、にこりと微笑んだ。
「そんな用件でここへ?ずいぶんお暇なんですね」
「はぁ?オレはさっきも、忙しいと言っただろう?」
社長室に呼ばれたんだ。
きっと俺の昇進か何かの話だろ。
俺は中卒のお前と違って、有能な人間だからな。
この人事部は通り道にあったから、覗いてみたまでさ」
部長の話を聞き、俺は大げさに手を打った。
「ああ、そうでしたか。それならちょうどいい。
私も呼ばれているので、ご一緒しますよ」
「はぁ?なんでお前も一緒に・・・」
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【スカッとする話】総務部長が懲戒解雇のクビ
俺は眉をひそめる部長の背を強引に押し、
「まあいいじゃないですか」と言いながら、社長室へ向かうのだった。
「娘から聞いたが、中卒の脳無しだとか、私の義理の息子を散々侮辱してくれたらしいね?」
社長の冷たい言葉が静かな部屋に響き渡る。
開口一番、社長にそう言われ、部長は青ざめて縮こまっていた。
妻があらかじめ社長に愚痴として話をしていたらしい。
部長は社長に対して頭を下げた。
「申し訳ございません。まさか本当にご令嬢の旦那様だとは」
「私が社長のお嬢さんの夫かどうかは関係ありません。」
奥様と一緒になって、中卒だから無能、品が無いと、初対面で言える人間性に難があると、私は思いますよ。
それから、謝罪するなら社長でなく私に対してでは?」
一瞬、悔しそうに表情をゆがめる部長と目が合う。
俺は先ほど部下から受け取った書類の束をめくっていく。
「ここには、あなたがパワハラなど、多くの問題行動をしてきた証拠がまとめられています。
私が異動してきてたった2週間ですが、簡単に証言も集まったところを見ると、いやはや、
よほど皆さん不満がたまっていたようだ。
中には音声データを提出してくれた方もいるんですよ。
私も社宅で録音していればよかったなあ」
俺の言葉に部長は目をむいた。
そもそも今日タイミングよく俺と部長が社長室に呼ばれたのは、俺と妻への無礼を
謝罪させるためだけではなく、部長の悪事を明るみにして、証拠を突きつけるためだ。
それこそ結果的に、妻の言ったようにクビになるかもしれない。
社長は黙って俺の言葉に耳を傾けてくれている。
「パワハラも大変問題ですが、中には会社のお金を私的に利用していたという証言と証拠も得ています。
少しずつならバレないと思っていたようですが、経理の人たちをナメス過ぎでは?
前々から怪しいと、証拠をそろえ、近々社長に直訴する予定だったそうですよ」
もはや血の気が引きすぎて白くなった部長は、
震えながら口を開いた。
「つ、妻が・・・妻が少しくらいならいいだろうと・・・それだけ、私は会社に尽力を・・・」
言うに事欠いて、まさか自分の妻を言い訳に使うとは。
「この期におよんで自分のための言葉を聞くとはね。
総務部長、君には本当に失望したよ」
社長も俺と同意見のようで呆れていた。
部長は膝をつき、頭を床にこすりつける。
「数々の無礼を謝罪します!心も入れ替えます!
どうかクビだけは・・・
し、収入がなくなったら妻に見放されてしまう!」
なるほど、と察しがつく。
奥さんは部長に比べてかなり若かったし、
いかにもセレブという見た目だった。
若く美しい妻をつなぎとめておくために、会社のお金に手をつけたのか。
本当に、どこまで見下げ果てた人なのだろう。
「会社に尽くして働いているのは、他の社員も一緒です!」
私を中卒のくせにと罵る前にご自分の行動を恥じたらいい!」
とどめとして俺が言い放つと、部長は床に顔を突っ伏したまま、
耳まで真っ赤にしてすすり泣いていた。
後日総務部長は
問答無用で懲戒解雇となり、今月いっぱいで社宅も出ると決まった。
社長の意向で刑事告訴ではなく、弁護士を通して示談を進めているが、
部長が会社のお金を私的に利用した件は犯罪であり、絶対に許せない行為だ。
夫人も、そそのかしたのが悪質として、彼女にもお金の返済を求めるつもりでいる。
せいぜい夫婦で苦労したらいいと思う。
特に夫人は部長の収入や権力に固執していたらしいから、全てを失い、今まさに絶望のどん底だろう。
事の結末を俺から聞くと、妻は「そう」と返し、満足そうに微笑むのみだ。
妻が急に「クビにしましょ」なんて言った時は、内心どうしようかと慌ててしまったが、
調べてみると実際に総務部長は問題の多い人物だった。
もしかしたら妻はそれも見越していたのかもしれない。
俺もどっしりとして構え人を見る目を養わなければと思う。
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