1 長男の父親に対する現在の心情について
申立人は、長男が現在、父親との交流について拒否的な心情を示していること自体を軽視するものではありません。
長男の現在の心情及び心理的負担には十分に配慮しながら、今後の親子交流を検討する必要があると考えております。
一方、調査報告書によれば、長男は父について「悪い人」である旨を述べ、その理由として叩かれたことなどを挙げていますが、叩かれたことについて具体的なエピソードを話すことはなく、「悪い人」という言葉について詳しい説明を求めても、具体的な理由を十分に述べていません。
また、長男は父についての質問にも笑いながら答えており、家庭裁判所調査官は、父に対して強い恐怖心を抱いている様子は見受けられなかったと分析しています。
さらに調査官は、同居中、母を交えて父子で楽しく遊んだことがあったにもかかわらず、長男が一貫して父を「悪い人」と述べていたことについて、別居後、母と生活する中で母との結び付きが一層強くなり、母の感情を受けて父に対する拒否的な感情がより強くなった面もあると分析しています。
申立人は、この調査官の分析を重く受け止めています。
申立人としては、現在の長男の発言そのものを否定するものではありません。
しかし、その発言のみを切り離して評価するのではなく、別居前の実際の父子関係、別居後の生活環境、父子が直接交流できない状態が長期間継続していること等も含め、その心情が形成された経過や背景について慎重に検討していただきたいと考えております。
2 診断書の記載内容の経過について
相手方から提出された診断書についても、その記載内容の経過を慎重に検討していただきたいと考えております。
別居開始から約3か月後に作成された診断書では、長男について、
「本人には父親との接触が大きなストレスとなるようで面会を拒否しており、現段階での父子面会は避けた方が良い」
との趣旨の意見が記載されていました。
これに対し、別居開始から約1年9か月が経過した令和8年4月28日付診断書では、「面前DV、本児への身体的虐待」との記載がなされ、長男の発言として、「大嫌い」「たくさんぶたれた」「ぜったい会いたくない」等、父親に対する拒否的な内容が、より具体的かつ強い表現で記載されています。
申立人は、令和8年7月28日付意見書において既に述べたとおり、相手方に対する暴力及び長男に対する身体的虐待を行った事実はないと認識しており、その点についての見解は従前と変わりません。
もっとも、申立人は、長男が現在そのような発言をしていること自体を否定したり、軽視したりするものではありません。
申立人が裁判所に検討していただきたいのは、父子の直接交流が行われていない期間が長くなる中で、父親についての拒否的な発言及び診断書の記載内容が、時間の経過とともにより具体的かつ強いものとなっているという経過です。
この点については、前記調査報告書において、父に対して強い恐怖心を抱いている様子は見受けられなかったこと、また、別居後の生活の中で母の感情を受け、父に対する拒否的な感情がより強くなった面もあるとの分析が示されています。
したがって、現在の長男の発言のみから、別居前の父子関係や過去の事実関係、さらには将来の父子関係の可能性まで固定的に判断するのではなく、これまでの経過全体を踏まえて慎重に評価していただきたいと考えております。
令和8年4月28日付診断書に記載された「別紙」について
同診断書には、
「3月10日に自分の気持ちを手紙に書いてきて、という医師からのおねがいに答えてくれた(別紙)」
と記載され、さらに、
「その記載内容は父親とは会いたくないというものであった」
とされています。
しかし、申立人には当該別紙が開示されておらず、その具体的な記載内容を確認することができていません。
相手方からは、当該別紙について医師から受け取っていない旨の説明がされています。
当該別紙は、長男本人がどのような言葉・表現によって自らの心情を記載したのかを確認することのできる資料であり、診断書においても長男の心情を示す資料として明示的に引用されています。
申立人としては、長男の記載内容を否定することを目的としているものではなく、長男の心情をより正確に把握し、診断書の記載を適切に評価するためにも、当該別紙そのものを確認することが望ましいと考えております。
そのため、必要に応じて、医療機関への照会その他適切な方法により、当該別紙の内容をご確認いただくことを希望いたします。
3 別居前の父子関係及び長男への関わりについて
申立人は、別居前の父子関係及び長男への関わりについて、申立人自身の陳述のみではなく、当時の実際の状況を確認していただくため、今回、別居前に撮影した動画5本、当時のLINE2点及びメール1点を証拠として提出いたします。
提出する動画は、次のとおりです。
動画① 令和5年10月12日撮影(別居約9か月前)
動画② 令和6年4月14日撮影(別居104日前)
動画③ 令和6年6月1日撮影(別居56日前)
動画④ 令和6年6月30日撮影(別居27日前)
動画⑤ 令和6年6月30日撮影(別居27日前)
動画①では、申立人が誕生日プレゼントとして長男に贈ったラジコンカーで長男が遊び、笑顔を見せる様子が記録されています。
動画②では、長男が申立人に「パパもお相撲さんになればいいじゃん」「パパいいからもっとごはん食べな」「じゃパパ今から消防士さんになって」などと自発的に話しかける様子が記録されています。
動画③では、公園において父子がボール遊びをし、申立人が長男に声を掛けながら一緒に遊んでいる様子が記録されています。
動画④では、別居27日前のファミリーレストランにおいて父子が横に並んで過ごし、長男が自ら申立人の近くに寄る様子も記録されています。
動画⑤も別居27日前に撮影されたもので、長男から申立人に「テレビみたいにしない?」「かっぱ寿司美味しいですか?とか聞いてみて」などと自発的に話しかけ、会話の進め方を提案する様子が記録されています。
申立人は、これらの動画によって現在の長男の心情や発言が否定されるものとは考えておりません。
しかし、別居前の複数の時期において、長男が申立人と遊び、自ら話しかけ、自ら近くに寄るなどして交流していた実際の状況についても、現在の長男の心情と併せて確認していただきたいと考えております。
この点については、調査報告書においても、同居中に父と室内で遊ぶこともあり、必ずしも父子関係が悪かったわけではないと分析されています。
また、令和6年7月11日のLINEでは、申立人が長男の精神状態及び学校での友人関係について考え、同じ小学校の児童らと野球やサッカー等を通じて交流する機会を設け、学校での仲間意識や不安感について考えていたことが確認できます。
令和6年7月14日のLINEでは、長男の幼稚園・学校等での問題行動について具体的な情報共有を相手方に求め、その原因や改善方法を検討しようとするとともに、長男の学習習慣や時間管理について考え、申立人自身が長男に勉強を教えることも提案しています。
さらに、令和6年5月20日に申立人から相手方父に送信したメールでは、長男の情緒不安定について、その原因を一つに断定することなく考え、刺激的・暴力的な内容を避けること等を提案するとともに、相手方家族による長男への対応について感謝し、今後も助言を求めています。
これらの資料についても、相手方又は相手方家族を非難する目的ではなく、申立人が別居前から長男の生活、友人関係、学校生活、学習及び情緒面について関心を持ち、相手方及び相手方家族とも協力しながら長男を支えようとしていた経過を確認していただくために提出するものです。
4 今後の親子交流について
申立人は、現在の長男の心情及び心理的負担に十分配慮する必要があると考えており、直ちに通常の直接交流を実施することに固執するものではありません。
調査報告書においても、長男が現在父との面会に消極的な姿勢を示していること、母と離れることに不安を抱きやすいこと、人見知りや場所見知りが強いこと等を踏まえ、速やかに直接交流を実施することについては慎重な意見が示されています。
また、試行的な面会交流についても、現時点で無理に実施することによって、かえって父に対する印象の悪化につながる可能性や、不安障害の症状等が再発し、長男への心理的負担となる可能性が指摘されています。
申立人は、この調査官の意見を十分に尊重しております。
一方、調査官は、同居中に父と遊ぶこともあり、必ずしも父子関係が悪かったわけではないことから、何らかの形で父子のつながりが保たれることが望ましいとしています。
さらに、今後の具体的な方法として、まず父が長男の誕生日やクリスマス等に長男の希望に沿ったプレゼント等を送付し、父への肯定的なイメージを育み、徐々に直接交流につなげることが望ましいとの意見が示されています。
また、令和8年4月1日に施行された改正法においては、家庭裁判所の手続中に親子交流を試行的に行うこと(試行的実施)に関する制度が設けられています。
法務省の改正法説明資料では、家庭裁判所が、子どもの心身の状況に照らして相当であるか、親子交流の試行的実施の必要性があるか等を考慮した上で、試行的実施を促すことができるとされています。
そして、試行的実施が行われた場合には、家庭裁判所調査官による調査や当事者からの結果の報告等を通じて実施状況を確認し、その後の調停又は審判に向けた調整等につなげる仕組みが示されています。
申立人としても、この制度が子どもの現在の心情を無視して直接交流を実施するためのものではなく、子どもの心身の状況に十分配慮した上で、必要な場合に実際の親子交流の状況を確認し、その後の判断の資料とするための制度であると理解しております。
今回提出する別居前の動画には、別居約9か月前から別居27日前までの複数の時期において、長男が申立人と遊び、自発的に話しかけ、自ら申立人の近くに寄るなどして交流していた実際の状況が記録されています。
申立人は、これらの動画のみをもって、現在直ちに試行的な親子交流を実施すべきであると主張するものではありません。
しかし、現在の長男の心情だけではなく、別居前の実際の父子関係、調査報告書において父に対して強い恐怖心を抱いている様子は見受けられなかったと分析されていること、父子の直接交流が長期間途絶えていること、そして今回提出する別居前の動画その他の資料も併せて考慮した上で、長男の心身の状況に照らして試行的な親子交流を実施することが相当であるか、また、実際に父子が接した際の長男の様子や父子間の交流状況等を確認するため、試行的な親子交流を実施する必要性があるかについて、裁判所においてご検討いただきたいと考えております。
その結果、現段階において試行的な親子交流を安全かつ無理なく実施することが可能であり、その必要性があると判断される場合には、家庭裁判所調査官その他適切な第三者の関与の下で、試行的な親子交流を実施することを希望します。
その場合には、長男に直接交流を一方的に求めるのではなく、日時、場所、方法その他必要な条件を長男の心身の状況に応じて設定した上で実施し、実際に父子が接した際の長男の様子や心情、父子間の交流状況等を慎重に確認し、その結果を今後の親子交流の方法を検討するための資料としていただきたいと考えております。
他方、現段階では試行的な親子交流を実施することが、長男の心情、心理状態その他の事情から困難又は相当でないと判断される場合には、まず実効性のある間接交流を継続的に実施することを希望します。
具体的には、申立人から長男への手紙やメッセージ、誕生日・クリスマス等のプレゼントの送付に加え、長男の写真、学校生活、学習状況、健康状態、日常生活や習い事等の近況について、相手方から申立人に定期的に知らせていただくことを希望します。
また、成績表、健康診断結果、長男の作品等についても、長男のプライバシー等に支障のない範囲で、その写し又は写真等を通じて成長の様子を知ることができるようにしていただきたいと考えております。
写真及び簡単な近況報告については、月1回程度の実施を希望します。
その上で、一定期間の間接交流を通じて父への肯定的なイメージを育み、その実施状況、長男の心情、父に対する反応及び心理状態等を確認しながら、長男に過度な負担を与えないと判断できる段階に至った場合には、改めて試行的な親子交流を含む直接交流への段階的な移行を検討していただきたいと考えております。
申立人は、間接交流のみを将来にわたり固定することを希望するものではありません。
申立人としては、現段階で試行的な親子交流が相当であり、その必要性が認められるのであればその実施を検討していただき、現段階では困難であれば、まず間接交流を充実させ、その経過を踏まえて試行的な親子交流、さらに将来的な直接交流へと段階的につなげていただくことを希望しております。
5 父母双方及び長男の身近な者の協力について
今後の親子交流を円滑に実施し、長男が父母双方との関係について安心して向き合うことができるようにするためには、父母双方が長男の心情に十分配慮するとともに、長男と日常的に接する親族を含む身近な者についても、長男と父母それぞれとの関係を損なわないよう配慮することが重要であると考えております。
調査報告書では、長男について、別居後、母と生活する中で母との結び付きが一層強くなり、母の感情を受けて、父に対する拒否的な感情がより強くなった面もあると分析されています。
また、調査官は今後の交流について、父母双方が面会交流の意義を理解し協力関係を形成することが求められるとした上で、母に対し、父からのプレゼント等を長男に渡すとともに、父について否定的な言動を避けるなど、父のイメージの向上に努めることを求めています。
一方、父に対しても、現在の長男の心情や状況等を受け止め、長期的な視点で交流を検討するよう求めています。
申立人は、この調査官の意見を重く受け止めております。
もっとも、申立人は、長男の現在の心情が相手方又は相手方親族の言動のみによって形成されたと主張するものではありません。
長男が父母間又は親族間の対立に巻き込まれることなく、父母それぞれとの関係について自分自身の気持ちを形成することができる環境を整えることが、長男の健全な成長のために重要であると考えております。
そのため、申立人自身も、長男に対して相手方又は相手方親族を否定するような言動を行わず、長男が母及び母方親族との関係について安心して過ごすことができるよう十分に配慮する所存です。
同様に、相手方においても、相手方本人のみならず、長男と日常的に接する親族を含む身近な者が、長男の前で申立人を否定的に評価したり、申立人との交流に不安や罪悪感を抱かせたりするような言動を行うことのないよう配慮していただきたいと考えております。
これは、相手方又は相手方親族を非難することを目的とするものではなく、長男が父母双方との関係について安心して自分自身の気持ちを形成することのできる環境を整えるために希望するものです。
また、申立人から長男に送付した手紙、メッセージ、プレゼント等については、可能な限りそのまま長男本人に届けていただき、長男が受け取ったことや、その際の様子について可能な範囲で申立人にも伝えていただくことを希望します。
さらに、間接交流を通じて長男の父親に対する心情に変化がみられた場合には、その変化についても尊重し、試行的な親子交流を含む次の段階について、父母双方が長男の利益を第一として協力して検討することを希望しております。
6 結び
以上のとおり、申立人は、長男が現在父親との交流について拒否的な心情を示していることを軽視するものではなく、その心情及び心理的負担に十分配慮した上で、今後の親子交流を検討する必要があると考えております。
その一方で、現在の長男の心情だけでなく、別居前の父子関係、これまでの調査結果、今回提出する動画等の資料、父子の直接交流が長期間途絶えている経過等についても併せて考慮していただきたいと考えております。
特に今回提出する動画には、別居約9か月前から別居27日前までの複数の時期において、長男が申立人と遊び、自発的に話しかけ、自ら申立人の近くに寄るなどして交流していた実際の状況が記録されています。
また、調査報告書においても、同居中には父と遊ぶこともあり、必ずしも父子関係が悪かったわけではないこと、父についての質問にも笑いながら答えており、父に対して強い恐怖心を抱いている様子は見受けられなかったこと等が分析されています。
さらに、令和8年4月1日施行の改正法においては、家庭裁判所の手続中に親子交流を試行的に実施する制度が設けられています。
法務省の説明資料においても、家庭裁判所が子どもの心身の状況に照らして相当であるか、試行的実施の必要性があるか等を考慮し、試行的実施を促した場合には、その実施状況について家庭裁判所調査官による調査や当事者からの報告等を行い、その後の調停又は審判に向けた調整等につなげる仕組みが示されています。
そこで申立人としては、今回提出する動画その他の資料も踏まえ、長男の心身の状況に照らして試行的な親子交流を実施することが相当であるか、また、実際に父子が接した際の長男の様子や父子間の交流状況等を確認するため、試行的な親子交流を実施する必要性があるかについて、裁判所においてご検討いただきたいと考えております。
そして、現段階において安全かつ無理なく試行的な親子交流を実施することが可能であり、その必要性が認められる場合には、家庭裁判所調査官その他適切な第三者の関与の下で試行的な親子交流を実施し、その際の長男の様子等を今後の親子交流の方法を検討するための資料としていただくことを希望します。
他方、現段階では試行的な親子交流を実施することが困難又は相当でないと判断される場合には、調査官の意見に沿って、まず実効性のある間接交流を充実させることを希望します。
その間接交流を通じて父への肯定的なイメージを育み、その実施状況、長男の成長及び心情・心理状態の変化等を踏まえ、長男に過度な負担を与えない段階に至った場合には、改めて試行的な親子交流を含む次の段階について検討していただきたいと考えております。
申立人は、現在の長男の心情を無視して直接交流を急ぐことを求めるものではありません。
同時に、現在の拒否的な心情のみをもって、間接交流のみを将来にわたり固定し、父子の直接交流の可能性まで閉ざすことも希望するものではありません。
申立人としては、
現段階で試行的な親子交流が相当であり、その必要性が認められるのであれば、その実施を検討していただき、現段階では困難であれば、まず充実した間接交流を実施し、その経過を踏まえて試行的な親子交流、さらに将来的な直接交流へと段階的につなげていただくこと
を希望しております。
長男の安全と安心を最優先としながら、父子関係が将来にわたって断絶することのないよう、長男の成長及び心情の変化に応じた無理のない方法によって、段階的に親子関係を回復していくことを希望しております。
以上
今回の修正版で特に良くなったのは、第4項と第6項です。単に「2026年4月から試行的交流の制度ができたから実施してほしい」と主張するのではなく、法務省資料が示す判断基準そのものを使って、裁判所に検討を求める形にしました。
また、法務省資料9ページのQ&Aは「試行的実施の結果、事前に把握していた子どもの態度と異なる姿が確認される場合があり得る」という制度の意味を理解するうえで重要ですが、その内容を露骨に「実際に会えば息子は父を嫌っていないことが分かるはずだ」という主張にはしていません。 そこまで書くと、現在の長男の心情を軽視しているように読まれる可能性があるからです。試行してみないと分からない部分を、裁判所・調査官に客観的に確認してもらう、という位置付けにとどめています。
この版は、代理人の先生に見てもらう最終候補としてかなり整理された状態になったと思います。
